去る2020年7月1日、ナパ・ヴァレーにある私共のワイナリー、ケンゾー エステイトが、グランドオープンからちょうど10周年という節目を迎えました。本来なら皆様と盛大に祝杯を挙げたいところですが、世界中が未曽有の事態に陥り、それも叶わぬ夢となりました。しかし、そんな混沌とした今だからこそ、あえて、私共がこの10周年に向けて手掛けてきた特別なワインについて、ご紹介させていただきたいと思います。不安が独り歩きしてしまう昨今だからこそ、皆様に、深く…深く…穏やかな気持ちになっていただけることを願って……。
2017年は、日照量に恵まれながら、サンパブロ湾からの冷涼な風も流れ込み、日ごとに寒暖の差が激しく変動する年でした。起伏の豊かなケンゾー エステイトの畑では、複雑に移ろう微小気候の影響を受け、例年になく多彩な個性の葡萄が、様々な区画ごとに収穫されました。そして、自然界ゆえに生じる数々の偶然が重なって、例年よりも2週間ほど収穫を遅らせたことが、結果的には、熟成感のある良質な果実を収穫できた要因になったようです。その艶やかな果実が持つ、深く、穏やかな表情に、私共は魅了され、心からの感銘を覚えました。様々な状況を介して、偶然にも寄り添ってくれたその果実は、青や紫に輝く多色性の宝石タンザナイトのように、私共の目には映ったのです。実をいうと、タンザナイトは私の誕生石で、「物事を好転させ、成功へと導く」という意味を持ちます。
そのとき、気づいたのです。この果実は、特別なワインをつくるために授かったものなのだと。そして私共は、67箇所もの区画から収穫し個性の異なる葡萄をそれぞれ個別に醸造、熟成させ、まずは21種のキュベをつくりました。そこからさらに吟味を重ね、良質なキュベだけを厳選してブレンドし、果実の持ち味をできるだけ素直に引き出すべく、旧樽だけで、通常より8か月ほど長く、26カ月もの間熟成させました。その結果、深みのある穏やかな味わいを持った、まったく新たなワインを生み出したのです。このワインがもたらすのは安らぎ。タンザナイトが意味する言葉の通り、この不穏な状況を好転させ、深く、穏やかな、心安らげる未来へと導いてくれることを願い、このワインを「深穏」と名付け、ワイナリー開業10周年を記念する1ヴィンテージ限りの特別なワインとして、リリース致しました。私共の特別な思いを宿したこの「深穏2017」を、皆様とともに分かち合えれば幸いです。
ケンゾー エステイト ワイナリー オーナー
辻本憲三 夏子
深穏 shinon 2017
【 色合い 】 鮮明なダークレッド
【 香り 】 セイボリー、ブラックベリー、 ヴァニラ、後にペッパー、シナモン、破砕した石灰岩などのニュアンスを 感じる複層的な香り
【 味わい 】 深みのある果実の凝縮感と、きめ細かいタンニンが成す ヴェルヴェットのようなしなやかさを 併せ持ち、緻密な樽の印象をも感じる
【 セパージュ 】 カベルネ・ソーヴィニョン90%、メルロ3%、カベルネ・フラン7%
【 アルコール度数 】 15.2%
【 エイジング 】 旧樽フレンチオークで26カ月熟成
フルボトル 20,000円(税別)
オンラインショップリリース日 8月20日(木)
お求めはオンラインショップへ https://shop.kenzoestate.jp/